菌本紹介2「奇妙な菌類」
お久しぶりです。気づけば夏が過ぎ、キノコの秋も終わろうとしています。菌本紹介の第2弾、紹介するのは「奇妙な菌類」(白水貴 著)です。
タイトルの通り、菌類の中でもヘンテコな種類ばかりが紹介されています。自分も色々キノコ本を読んできたつもりですが、知らない種もたくさん出てきました。
その中でも自分が興味を持ったキノコが2つありました。1つはゲオシフォン(Geosiphon)。チリなどにいるというこの菌からビール酵母が見つかったそうですが、そのことより興味を引いたのはそのビジュアルでした。これを現地では食べるらしい……。ぜひググってみてください。
2つめはマッティロロマイセス・テルフェジオイデス(Mattirolomyces terfezioides)(本文中では生物名がカタカナ表記でしたが、終わりに出てきた種の学名をまとめて載せていたのがありがたかったです)。これは地下生菌なのですが、なんと甘い味がするみたいです。甘いキノコは食べたことないので味が想像出来ません。甘い成分を作る菌がいるのも驚きました。
札幌キノコの会の事務局通信第39号に気になる記事がありました。特徴が一致するので近縁種だと思われます。10年後には札幌でもスイーツキノコが出回るかもしれません。
菌本紹介は本当は自分の蔵書から紹介しようと思っていたのですが、これは北大図書館で借りてきました。北大生はぜひ読んでみてください。
マンネンタケを干した話
テスト期間だったため、久しぶりのブログである。今回はTwitterのサムネにもしているこのマンネンタケの話。
マンネンタケは中国では霊芝と呼ばれており、乾燥させれば観賞用となることも知っていた。6月中旬に採取するチャンスを得たので、標本にしてみることにした。その過程を書いていく。
乾燥させたのは上の写真2つに写っている2つ。写真だとサイズが分かりにくいが、1つは人差し指サイズ、もう1つは手2つ分くらいの大きさだ。
生えていた朽木の一部ごと採取したので、まず断面を綺麗にした。小さな方は包丁で切り落とせたが、大きな方は断面が硬すぎて包丁が立たず。そのまま乾燥させることに。
調べると、乾燥キノコ標本作りには布団乾燥機を使うとよい、という記事を見つけたが当然持っていない。古代中国にも布団乾燥機は無いはずだ!という信念で自然乾燥させることに。最初2日は日陰干ししたが、乾燥する気配がなくカビが生えるのを恐れて日向に移動させた。
乾燥3日目、裏面が真っ白に。湿った粉のようなもので覆われていて、ティッシュで擦ると薄い茶色になるものの、すぐ元の状態になる。未熟な胞子が出てきたのだろうか?
乾燥開始から1週間。小さいほうはほぼ乾燥出来たが、大きなほうはまだ乾かない。縁のほうが少しずつ乾燥し始め、反ってきた。固めのパンケーキのような触り心地。光沢のある部分も、内部が縮んだからか亀裂が入る。裏面は黒くなってきた。かなり強めのキノコ臭がする。
乾燥開始から1週間半、突然白いカビのようなものが現れる。水やアルコールなどで擦っても取れない。パイプユニッシュで擦って見たら、一部は取れたものの完全に除去は出来なかった。
乾燥開始から2週間。ほぼ完全。標本用だったら半分に割って乾燥させるのだが、観賞用にしたいので割らず。若い個体だったので水分量も多かったのだろう。発生終盤になればもっと乾かすのは楽なはずだ。
特徴であるニスのような光沢は、半分程しか残らず。重量は最初の半分以下になっていそう。
完成してから気づいたが、大きな方は置く場所に困る。そしてキノコ臭を放ち続けている。マンネンタケは薬効があるとされるため、煎じて飲んでみようかと思案中である。
菌本紹介1 「きのこくーちか」
きのこは朽木や地中だけでなく、僕らの頭にも菌糸を生やす。そうしてある者はキノコの写真を撮り、ある者はキノコを同定し、そしてある者はキノコ本を作るのだ。キノコ本とは、「キノコ(菌)をメインにした本」と定義したい。自分はキノコ本も大好きなので、少しずつ紹介していけたらと思う。
1冊目は「きのこくーちか」。
雑貨屋で働いているロシア人のワーニャと、きのこ雑貨を作っているゆう太が中心のストーリー。ワーニャとゆん太の住む家はきのこモチーフの家具ばかりだし、各話のテーマも毎回きのこである。
自分がシャグマアミガサタケを食べたいと思うようになったのは、この漫画を読んでからである(実際の様子は前回のブログ参照)。まだこの漫画に出てたが食べていないキノコも、密かに狙っている。例えば、大きなオニフスベを友達と料理してから「そんな美味しくないね」なんて話すとか。
絵柄も可愛く、専門用語も出てこないのでキノコの面白さが存分に楽しめる。また、キノコの情報も割と正確であるのも嬉しい。日常系の漫画としても充分に面白い。
1冊800円、2冊買っても1600円である。是非買って欲しい。作者の新國さんの作品は一般発売されているものが少ないので、この漫画が好きな人間としてはもっと売れて欲しいのが本音である。
友人とシャグマを煮た話
世間はGWに浮かれる5月初旬、自分は札幌駅からバスで1時間弱の山のふもとにいた。前日に友人が虫取りに行く人を募集していたのでそれに乗っかったのである。
友人はあるカミキリムシが目当てだったらしいが、2時間ほど探しても採れなかった。自分もほとんどキノコを発見出来ず、くたびれた雰囲気で下山中のこと。
あった。その特徴的な形はどう見てもシャグマアミガサタケ。しかもかなり大きい。握り拳より少し大きいくらいのサイズ。
猛毒で知られているが、毒ぬきをすれば食用になることは知っていたので採取。たまたま友人がカセットコンロを持っているというので一緒に食べることにした。
ここで注意して欲しいのだが、シャグマアミガサタケはあくまでも「猛毒のキノコ」である。絶対に処理をせず食べてはいけない。自分はともかく、友人を殺すわけにはいかない(自分も死にたくないけど)。
蒸気にも毒が含まれるため、絶対に室内ではやるべきではないだろう。ネットではベランダや外階段でやっているパターンが多かったが、自宅はベランダなし内階段である。……ということで万全を期した結果このような絵面になった。
これなら蒸気を吸い込む心配もないだろう(怖いので調理中はしばらく離れたところで見張っていた)。
手との大きさ比較。自分の手は手首から中指の先までだいたい20cm。
肝心の毒ぬきは、「シャグマの体積の3倍の沸騰した水で5分茹でこぼすⅹ2セット」で食べれるようになるらしいが、怖いので今回は「沸騰した水で8分茹でこぼす×3セット」とした。1回目は石づきの部分をそのままにしていたが、2回目からは切り落とした。茹でる前は石づきの部分が脆かったため一緒に茹でたのだが、必要な水が多くなり時間がかかるので最初から取っておいた方が良かっただろう。
煮ている最中。確か1回目の茹で。アクがかなり出る。肉を煮ている時のような、野生味のある匂いがする(匂いがわかるということは若干毒成分を吸入していた……??)。
茹でる度に出るアクは減った。これは3回目の茹での写真。
処理の終わったシャグマを早速食べることに。まずは煮ていた鍋をしっかり洗う。本当は要らない鍋で茹でて、食べる際は別の鍋を使う方がよいのだが、鍋がひとつだったのでやむなし。大きかったので4等分にし、友人と1切れずつ食べることに。残った2切れは自宅で乾燥させた。
炒めて、塩コショウでいただく。シンプルな調理法の方が味がわかりやすいはずだ。
(´〜`)モグモグ
想像していたよりも柔らかい。もっと弾力があるのを想像していたが、歯ごたえは少なかった。もしかしたら煮すぎたかもしれない。旨味は強い。ただ、想像していたパンチのある旨味ではなくて上品な旨味だった。匂いはやはり肉に近い。豚肉を茹でた時の匂いが1番近いかな?
切り分けずにひとつ丸々かじっていたらもっと食べ応えがあったかもしれない。単体だと味にパンチがないので、料理法は工夫の余地がありそう。北欧の一部では食べるようなので、そこでのレシピが知りたい……
ちなみに、その後自分も友人も腹痛や嘔吐などの中毒症状は出なかったので毒ぬきは成功していたよう。ただこれが正解かは分からないし、食べたい人は充分調べてからやることをおすすめします。
巨大なアミヒラタケを食べてみた
5月下旬、札幌。調査のため公園の端を歩いていると………
何やら巨大なキノコが。パッと見で「香茸か!?」と思ったものの時期が違う。香茸は秋のはずだし、そもそも地上から生えるはずではないか。(今考えるとなぜ香茸と思ったのか疑問だが、前日に香茸料理の記事を読んでいたからかもしれない)
裏を見るとどうやらタコウキン類のよう。食べられそうだし、とりあえず持ち帰って調べて見ることに。
大きさはこれくらい
帰宅して測ったところ、短径21cm長径28cmだった。
断面はこんな感じ。掴んでいるあたりは密に詰まっていて硬そうだが、それ以外は硬くない。
帰宅して北海道きのこ図鑑を参照したところ、発生時期とサイズからどうやらアミヒラタケというキノコらしい。
……食えるじゃん!!\(^o^)/
幼菌というにはデカすぎるが、食べれそうな硬さなのでいけるだろう。参考にしようと「アミヒラタケ 食べる」などでググッても1つくらいしか記事を見つけられなかった。
推測だが、図鑑に「数日で繊維質が強くなるので、食用期間は短い」とあるので、見つけても食べられないパターンが多いのではないだろうか。自分は食える上にデカいアミヒラタケと遭遇するという幸運を掴んでいた模様。
でかいやつの隣に小さめのもいた。そいつの裏面と断面。
キノコ臭がするが、あまり臭くはない。とりあえず洗っていく。洗うとかさについている鱗片はボロボロ落ちる。表面に若干ヌメリが出るが、気になるほどではない。
さて虫ぬき、と思ったがきのこが大きすぎて丸々漬けられるボールがない。仕方ないので大雑把に切ってから塩水に30分ほど漬ける。虫食いがあまりない部分もあるが、半分ほどの部分は断面に虫食いが見える。
出てきたのは全部こいつら。恐らくキノコバエの幼虫。10匹以上出てきた。
虫ぬき終わったものは1cm弱くらいの幅にスライスしてオリーブオイルで炒めてみた。味は塩コショウのみで。今気づいたが、完成品の写真を撮り忘れた……
味は噛みごたえのあるエリンギみたい。ただ、エリンギよりもジューシーで旨みが溢れてくる。噛みごたえもあるので肉を食べているような満足感もある。美味しい。
ただ、根元に近い部分は固くて飲み込めず。筋っぽい肉の噛みきれない部分みたいな固さ。あと数日遅かったら食べれなかっただろう。
この日は予定があったので余ったものは食べやすいサイズに切って、1食分ずつジップロックに入れて冷凍庫へ。硬そうな部分と可食部少しは乾燥させてみることに。あれだけ旨みがあれば、硬いところでも出汁がとれるのでは??
また別記事でアミヒラタケの別の料理を紹介しようと思う。
きのこが好きになった訳
初めまして、と誰もいない空間に挨拶するのは、少し難しい。しかし、兎にも角にも初めましてなのだ。初めて、こうしてブログを始めたのである。
北大キノコ同好会、というサークルのようなものを作ってみた。嬉しいことに、作ってから数時間で入りたいという人から連絡を貰えた。昨年から作ろうか迷っていたので、作ってみて良かったと思っている(まだ活動は何もしていないけれど)。
何故キノコ好きになったのか、と友人にはよく聞かれる。はっきりと興味を持ったのは高校時代だ。生物の授業では5界説というものを習うが、具体的に学ぶのは動物と植物と細菌のことばかりであった。動物界と植物界と同列のように書いてある菌界のことは全く勉強せず、そこに違和感を覚えて自分で調べていたらどんどん好きになってしまった。
キノコ、というよりも菌類の魅力というのはその「よくわからない」部分の多さにある。図鑑に載る種数はどんどん増えるし、図鑑の記述も「不明」だらけだ。どこにどのキノコが生える、という情報もあまりない。研究者も動物や植物と比べたらとても少ない。
ただ、キノコの何が好きなのかいまだに自分は分かっていない。形も好きだし見つけるのも関連本を読むのも食べるのも好きだ。キノコ関係のものを見るとドキドキする、でもなぜドキドキするのかはわからないのである。
虫好きの友人は「自分が虫好きになったんじゃない、気づいたら周りが虫好きじゃなくなっていたんだ」と言っていた。自分もこれに近いかもしれない。周りが自分の思うよりキノコ好きでなかったのだ、と。
サークルのブログとしてはもっとキャッチーな文章にすべきだったのかもしれない。これからは「○○をしてみた」系の記事を書いていこうと思うので、もっと写真ばかりになると思われる。これからも、何卒よろしくお願いします。
一昨年見つけたヒトヨタケ科の幼菌